公費による1人1台端末が実現した小中学校では授業改善が進む一方で、高校では端末代が重荷になり、利用も低調となっています。MM総研の調査によれば、高校での情報端末の公費負担をする地域で、継続の見通しが立っているのは8自治体に過ぎません。コロナ下での臨時的な交付金を原資とした自治体が多いという事情があります。中高生の52%が端末を無料または安く買えたり、レンタルできるようにする支援を望んでいます。
私立高では端末の購入支援は少なく、保護者には費用負担がのしかかっています。小中学校では端末を使って学ぶ風景が定着していますが、高校でICT機器を使う機会は少なくなっています。高校の現場では、教員の板書きをノートに写す伝統的な授業風景が少なくありません。受験を視野に入れた学習が優先し、端末を使った探求的な学びをする余裕は少なくなっています。
授業料無償化の本格実施に伴い、高校改革の議論が進む中、DXを促す視点が必要です。経済産業省の推計では、2040年にAIやロボットの活用を担う人材は約326万人不足します。デジタル人材が増えなければ、経済、社会活動が停滞してしまいます。

(2025年11月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)





