「ワクチンは危険」という偽情報

米国は、27年ぶりのはしかのアウトブレイクに見舞われています。今年に入って、すでに1,000人以上の米国人がはしかに感染しています。はしかはワクチンによって撲滅されたと考えられていましたが、未接種の旅行者が旅先からウイルスを持ち帰るためです。予防接種率が下がったのは、ワクチンが安全ではないという噂を拡散するキャンペーンが、SNSで展開されたことが要因となっています。
米国の公衆衛生当局は、偽情報に恐怖心を煽られたかもしれない親とのコミュニケーションを改善しようとしています。反対派は、ワクチンのせいで子どもが自閉症になる可能性があると人々の不安を煽ります。一方、専門家らは予防できたはずの病気に罹り苦しんだ人の悲劇を伝え、対抗することが重要だと考えています。デンマークとアイルランドでは、若い女性へのヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種への懸念が生じた時、子宮頸がんで妻や母を失った人たちの証言をSNSで伝える対策をとっています。ネット上の誤情報をリアルタイムで監視し、世界各地の保健当局に警告を出すトリアージ的手法を実践することも大切です。ワクチンにまつわる誤情報に立ち向かう完ぺきなプロトコルは、まだ見つからないのが現状です。

(2019年8月27日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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