いじめ件数の増加に憶う

 2016年度に全国の学校で32万件以上ものいじめが把握されました。前年度から4割増で、過去最多となっています。文部科学省の呼びかけを受けた教育委員会や学校が、見過ごされてきたいじめの発見に力を入れた結果だと思われます。最近では、現場からのいじめの報告件数が少ないと教育委員会の指導が入ることもあります。件数の増加が必ずしも教育の意識が上がったことによるとは思えませんが、いじめの実態を理解する上で大切です。
 「いじめゼロ」を目指した過去と異なり、いじめはどの学校にも起こりうるという前提で、教員の意識改革が求められます。「見逃しゼロ」への軸足の転換が必要になります。小さないざこざでも、重大な事態につながりかねないことは、これまでのいじめ自殺の教訓であり、兆しを見逃さない姿勢は大切です。
 いじめの件数を報告するとう姿勢だけが優先され、指導の内実がついていかなければ本末転倒です。いじめ防止対策推進法の定義を機械的にあてはめるのではなく、教育の視点で見直す必要があります。小学生の自殺は、2016年度に過去最高の244人にも達しています。自殺者全体が減り、少子化で子どもの人数も減少する中、小学生の自殺者数が増えていることは非常に深刻な状況です。子ども命を守るには、安心で安全な学級環境が必須です。

(2017年10月27日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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