うつ病の誘因としてのストレス

慈恵医科大学の研究グループは、疲労やストレスがうつ病を引き起こす原因となるたんぱく質を同定しました。疲労とウイルスの関係を調べ、疲労が蓄積すると唾液中にヒトヘルペスウイルス(HHV)6が急増することを突き止めました。HHV6は、赤ちゃんの病気である突発性発疹の原因ウイルスで、ほぼ全ての人が乳幼児期に感染し、以降ずっと体内に潜伏感染しています。普段は休眠していますが、体が疲れると、HHV6は目覚め唾液中に出てきます。その一部が口から鼻へ逆流する形で、においを感じる脳の中枢である嗅球に到達し、再感染を起こします。
再感染すると、嗅球でSITH1というたんぱく質が作られ、この働きで脳細胞にカルシウムが過剰に流れ込み、死んでいくことを培養細胞やマウスの実験で突き止めました。さらに、嗅球の細胞死によって、記憶をつかさどる海馬での神経再生が抑制されていました。ストレス状態におかれたマウスが、逃げる行動を諦めるまでの時間を計るうつ病モデル実験があります。この実験で、嗅球でこのたんぱく質が作られるようにしたマウスは、通常のマウスより早くあきらめ、抗うつ剤を与えると、通常マウス並みに戻っています。

(2020年6月14日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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