がんウイルス療法

 感染症を引き起こすウイルスを改変し、がん細胞だけを破壊して治療する技術が相次いで開発されています。国立がんセンター研究所や鳥取大学は、それぞれ現在の医療では治療が困難な膵臓がんに対する効果を動物実験で確かめています。がんウイルス療法は抗がん剤が効かない転移・再発したがんの新たな治療法として実用化が目指されています。風邪の原因になるアデノウイルスや口内炎を引き起こすヘルペスウイルスなどを使用し、ウイルスの遺伝子を改変し、がん細胞にだけ感染するようにし、ウイルスががん細胞の表面に現れる分子を標的に結合して入り込みます。ウイルスは増殖してがん細胞を破壊します。正常な細胞には影響が及びません。
 ウイルスががん細胞を破壊すると、免疫細胞に攻撃目標となるたんぱく質が提示されます。この性質を利用し、免疫療法と組み合わせて攻撃力を高める手法も開発されています。しかし、成人のほとんどは、様々なウイルスに対する免疫を持っています。体内を移動する間にウイルスが壊されないように、効果的にがん細胞に届ける技術の開発も必要になります。

(2018年5月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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