がんゲノム医療の全国展開

がんゲノム医療は、がんの原因となる遺伝子変異を調べ、効く薬を特定して治療につなげようというものです。これまで、抗がん剤は、肺がん、乳がんなど臓器別に選ぶのが基本でしたが、同じ肺がんでも原因遺伝子が違うと、薬が効くかどうかや副作用の強さに違いが出てきます。遺伝子変異を事前に調べ、あらかじめ効きやすい薬を見つけられるだけでなく、副作用の負担や、無駄な医療費を減らすことにつながります。解析機器の進歩で、近年は100種類以上の原因遺伝子を一挙に調べることができます。
国は今春、11の中核拠点病院と連携する100病院を発表し、推進策に取り組み始めました。国立がん研究センター中央病院では臨床研究を本格化させ、来年4月の保険適用を目指しています。しかし、検査の費用が高額なうえ、治療薬が見つかるのはまだ1割程度と低いのが難点です。
遺伝子検査が保険診療になれば患者の費用負担は激減し、検査を受ける人が一気に増えます。大量に蓄積される遺伝子データを活用し、がんに関連する新しい遺伝子変異の特定や薬の開発に役立てます。保険診療にするには、コストが効果に見合うかどうかという費用対効果の観点も重要になります。

(2018年5月17日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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