がんゲノム医療への期待

がん患者の遺伝子を調べて、効果が見込まれる場合だけに薬を投与する全く新しいがん治療が始まります。患者が苦しむ副作用の防止や新薬開発へ貢献するだけでなく、無駄な投薬を省くことで、医療費を削減する切り札になるとの期待もあります。これまでのがん治療は大腸や胃、肺などの臓器ごとに使う抗がん剤を決めて患者に与えていました。しかし、同じ臓器のがん細胞でも、細胞の個性といえる遺伝子の違いで抗がん剤の効果や副作用が大きく異なります。遺伝子検査から薬の投与前に効果が期待される患者だけに薬を投与する治療が、がんゲノム医療です。
がんゲノム医療は、膨らみ続ける医療費を削減する期待もあります。既存の抗がん剤の7~8割が、効果が十分でないとする意見もあります。2014年度の日本の薬剤費は、約9兆円にも達しています。高齢化と医療技術の進歩で、20年間で3割以上増えています。がんの薬剤費は約1兆円ですが、薬剤費はうなぎ登りです。患者を絞り込み無駄な投薬を防げば、中長期的には高騰する医療費の削減につながることが期待されます。

(2018年6月29日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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