がん免疫療法

 がん療法の中で免疫療法は、手術、抗がん剤、放射線に次ぐ第四の治療法としての地位を確立しつつあります。がん免疫療法は、体内で異物を排除しようとする免疫反応を利用し、がん細胞を攻撃する方法です。既存の抗がん剤に比べて、吐き気や脱毛などを伴う副作用が少ないとされています。ただ治療効果は限定的で、製薬会社の臨床試験でもなかなか成果が出ず、治療法として取り上げにくい薬剤でした。これまで効果を疑問視してきたがんの専門医も、最近になり積極活用する動きが出てきています。
 免疫療法の地位が治療現場で飛躍的に向上したのは、悪性黒色腫(メラノ-マ)向けの治療薬オプジ-ボの発売がきっかけです。この薬は国の保険が適用された初めてのがん免疫療法で、点滴で3週間に1回投与します。オプジ-ボは、がんを攻撃する免疫細胞のT細胞の働きを助けます。がん細胞は成長するにつれて、T細胞の表面にあるたんぱく質PD-1に結合し、その攻撃を避けて増えていきます。投与したオプジ-ボは、患者のT細胞のPD-1を覆い、がん細胞とくっつかないようにして、T細胞のがん攻撃を助けます。他のがんでも治療効果がある可能性が高く、肺がんや腎細胞がん、頭頸部がん、胃がんなどでも治験が進んでいます。

(2015年8月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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