こうのとりのゆりかご

 2007年より熊本市の慈恵病院は、実親が育てられない子どもを匿名で預かるこうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)を設置しています。熊本市によると、2015年度までに預けられた子どもの数は125人であり、29人が身元が分かっていません。大半は未受診出産であり、自宅や車中で出産するケースも目立っています。預けた理由は、不明が25.7%、次いで生活困窮が21.8%、未婚と世間体を考慮し、戸籍に入れたくないがそれぞれ17.8%でした。障害のある子も約1割にのぼっています。
 赤ちゃんポストに関する法整備はこれまでなされていません。実親が匿名で赤ちゃんを預けても保護責任者遺棄罪に抵触しないのは、病院が安全で、子どもの健康を維持できる施設と、県や市、警察などが解釈していることによります。年間の病院負担は約1千万円にも達します。病院への相談件数は、2015年度は5,466件に増えています。匿名性を担保しないと救えない命に対して、国は自治体任せにして静観するのではなく、設置のあり方について何らかの見解を示すべきであると思われます。

(2017年4月5日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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