これからの社会と産婦人科医療―Ⅰ

社会構造の変化
ヒトは生まれ、成育そして成熟してやがて結婚をし、子どもを産み育て、やがて年老いてその一生を終える。いま、女性のこのようなライフスタイルは経験したことがないような変化に晒されている。最近のわが国においては、思春期の早発化、性交年齢の若年化、高学歴化とともに晩婚化から出産開始年齢が遅くなっており、未婚化も相まって少子化に拍車がかかっている。産婦人科は女性のライフサイクルと密接に関連のある診療科であり、産婦人科医療は女性のライフサイクルの変化により大きな変貌を遂げている。
わが国の少子化は世界に類をみないスピードで進行しており、このままの状態が続けば国家存続の危機である。現在の少子化問題には、女性の未婚化、晩婚化のみならず、複合的な要因が考えられる。少子高齢化による人口構成の変化は、社会にさまざまな歪みをもたらすことになる。出生率が上昇せず、女性の社会進出や若年者の就労率の改善がなされないままであれば、わが国の労働力人口は40年後に3分の2に減少すると推計されている。労働人口が減少する一方で、医療費や年金などの社会保障費は年々増大している。長年続く低出生率が全国で過疎化や高齢化をますます助長させ、社会の継続可能性を危うくしており、人口増加を前提にしていた従来の社会保障制度が成り立たなくなってきている。
近年の政権は子育て支援策を打ち出し、待機児童の解消や子育てと仕事の両立のための働き方改革を積極的に進めようとしている。消費税引き上げによる社会保障の充実の財源の一部が、子ども・子育て支援に使用されることになったのもその一環である。今後は若い世代の雇用を安定させ、結婚して子どもを産み育てやすい環境を整えることが肝要となる。長期にわたる合計特殊出生率の低下が、結果的に高齢化を招くことになる。高齢社会となったすべての国では、合計特殊出生率が2.0を下回っており、両者の間に密接な関連があることが指摘されている。一方、諸外国の合計特殊出生率は女性の労働力率と相関しており、出生率が高い国では女性が働いている割合が多くなっている。諸外国においては女性が子どもを産んでも働きやすい環境ができているが、逆にわが国では女性が働いていると子どもが産みにくい状況にあるといえる。社会が、そして国が子どもを育ててゆくという考え方に転換していかなければ、出生率の改善は到底望むことができない。人口の増加を前提にしていた従来の社会保障の仕組みをどのように変えてゆくかが今後の大きな課題である。

(吉村 やすのり)

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