わが国のがんゲノム医療

 がんは、遺伝子が傷つき変異することで起こりますが、同じ臓器でも変異のタイプは何種類もあります。また、違う臓器で変異のタイプが同じということもあります。遺伝情報を解析してがんの原因となった変異を見極め、治療に生かすのが、がんゲノム医療です。がんゲノム医療とは、がんの原因となる遺伝子変異を調べ、それに応じて薬を選ぶがん治療のことです。これまで薬は、臓器ごとに効くかどうかわからなくても使われ、効果や副作用に個人差がありました。しかし、遺伝子解析の技術が進み、効く薬を事前に選べる可能性が高まってきました。
 欧米では、がんの原因となりうる遺伝子100種類以上を一挙に調べる検査が進んでいます。遺伝情報がなければ、最適な治療法を見つけることはできないとされています。米国では、実用化が進み、こうした検査もカバーする民間保険がいくつもあります。それに比べて日本は遅れており、研究や実費診療で一部の病院が行っている程度です。新たにがんと診断される人が年間100万人を超え、欧米に追いつこうと政府も動き出しました。日本でも国を挙げてがんゲノム医療を推進することになります。

(2017年7月31日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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