わが国の不妊治療の現状

4月に不妊治療の保険適用範囲が拡大し、体外受精など高度な治療の経済的なハードルが下がりました。世帯収入の少ない20~30代前半の若年層も治療を受けやすくなってきています。保険の適用範囲拡大により、以前は数万円だった人工授精は1万円未満に、40万円以上かかる場合が多かった体外受精は10万円台から受けられるようになっています。
日本の不妊治療患者は、他国に比べ高齢の傾向があります。日本産科婦人科学会の2019年のデータでは、40歳以上が約32%を占めています。米疾病対策予防センター(CDC)の2019年のデータでは、40歳以上は約20%にとどまり、35歳未満が約37%と日本と大きな差があります。英国の2019年のデータでも40歳以上は2割程度です。日本の患者年齢の高さは国際的にみて異常です。
多くの日本女性が妊娠を考えるのは、仕事が一段落してからです。その結果、結婚年齢や出産を意識する年齢が上がり、治療が必要になる人が増えてしまいます。欧米に比べ、日本は家事や育児の男女平等が進んでいません。キャリア形成で重要な時期と妊娠適齢期は重なり、仕事と家事・育児を一度に負うことは難しいため、仕事を優先してしまっています。妊娠や不妊についての知識不足も関係しています。

(2022年10月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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