わが国の晩婚・晩産化を考える

子どもが欲しいと望むすべての人が実際に出産したとすると、日本の出生率は1.8になる計算です。しかし保育サービスや育児休業の拡充など一定の対策を進めてきたにもかかわらず、2018年に現実の出生率は1.42と3年連続で低下しています。また出生数も3年連続で100万人を割り、91万8千人まで減少しています。出生率の低下の背景にあるのが、一つには出産年齢の上昇です。1995年時点で27.5歳だった第1子の平均出産年齢は、2018年時点で30.7歳と3歳以上も上がっています。平均初婚年齢も夫が31.1歳、妻が29.4歳と高止まりしています。日本では結婚せずに子どもを産む人は2%程度しかおらず、晩婚化が出生数減少に大きく影響しています。第1子の出産年齢が上がった結果、第2子、第3子を産む人も少なくなっています。
出生率を上げるためには、20代の早い年齢から出産し、第2子、第3子を産みやすい環境を整えることが重要です。働く女性が増える中、新卒採用と終身雇用を前提とした日本型のキャリア形成のあり方が、晩婚化・晩産化に影響を及ぼしています。年功序列を前提とした人事制度では、出産や育児を理由に一度レールから外れると復帰しづらい仕組みになっています。就業と出産や育児が両立できるようなシステムづくりが必要になります。
20代の出生率が高いフランスやスウェーデンなどの諸外国では、高卒後すぐには大学に進まない人が目立ちます。経済協力開発機構(OECD)によると2017年の大学入学者の平均は22歳で、その間に結婚や出産、育児を選択する人も多くなっています。高校卒業後大学に進学し、すぐ就職するという日本の一般的なライフスタイルが一つの障壁になっていることも否定できません。政府は現在、待機児童対策や幼児保育・教育の無償化など、子どもを持つ家庭への支援に力を入れています。このような経済的支援も大切ですが、出産や子育てを含めて柔軟な生き方を選択できるように環境を整えていくことが必須です。

(2019年7月11日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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