ウイルスから体を守る免疫の仕組み

免疫の仕組みは主に2つあります。1つは病原体が入ってきた時にいち早く察知して最初に働き始める自然免疫という仕組みです。自然免疫は、血液に含まれるマクロファージや好中球、樹状細胞などの細胞などが担っています。食細胞と呼ばれ、ウイルスなどの病原体を取り込み排除します。しかし、自然免疫を担う細胞は、寿命が短くて働きが長く続かないうえ、特定の病原体を狙って攻撃する能力は高くありません。自然免疫の攻撃を逃れ、体の奥深くに侵入する病原体も少なくありません。
もう一つの獲得免疫は、病原体の特徴を調べて攻撃する仕組みです。血液に含まれる樹状細胞などが病原体を取り込み、ペプチド(たんぱく質の断片)に分解します。樹状細胞はリンパ節や脾臓へ移動し、病原体の目印になるペプチドをヘルパーT細胞という免疫の司令塔に示します。ヘルパーT細胞は、さらに病原体の特徴をキラーT細胞やB細胞と呼ばれる他の免疫細胞に伝えます。この情報を受け、キラーT細胞は標的の病原体に感染した細胞を攻撃します。一方、B細胞は、免疫グロブリンと呼ばれる抗体を作り出し、病原体の働きを抑え込みます。新型のウイルスなどに対応するための巧妙な免疫システムです。
この抗体は、感染者が免疫を獲得したかどうかを調べる検査としても注目を集めています。6~7割程度の住民が抗体を持てば、感染の拡大を防げる集団免疫につながります。この獲得免疫はワクチンの効果にとっても鍵を握っています。いったん感染して免疫が得られれば、数年~数十年の期間にわたり抗体が体内にできるからです。しかし、新型コロナウイルスでは、感染しても抗体ができにくいとの指摘もみられます。

(2020年5月1日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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