ウイルスの起源

ウイルスがどこから来たのか探ることは、パンデミックがどうやって起きたのかを説明するだけでなく、リスクのあり方を知り、次のパンデミックを予防することにつながります。新型コロナウイルスの出発点がコウモリなのかを確かめるだけでなく、よりヒトの生活圏に近い、中間宿主と呼ばれる直接の感染源を特定することも求められています。
SARSやMARSのウイルスの場合、中国の市場で売られていたハクビシンから99.8%、農場で飼われていたヒトコブラクダから100%、遺伝子配列が異なるウイルスがそれぞれ見つかるなどし、中間宿主だとされています。新型コロナの場合、全身が硬いウロコに覆われた哺乳類のセンザンコウが中間宿主ではないか、という説があります。
ヒトに感染する病気を引き起こすコロナウイルスは6種類見つかっていました。SARSとMARSのウイルスは重篤な症状を引き起こすが、他の4種類はいわゆる風邪のコロナウイルスで、多くの場合、感染し発症しても軽症ですみます。7番目が新型コロナウイルスです。ウイルスとして見れば、性質はほとんど同じですが、ヒトに免疫があるかないかの違いが大きいとされています。別の動物から種の壁を超えて感染したウイルスには免疫がなく、時に重篤な症状が引き起こされます。そして、ヒトからヒトへ感染するようになれば、パンデミックにつながります。
一般にウイルスは、感染を繰り返すことで、どんどん弱い症状しか引き起こさないように変化していくと考えられています。宿主とする生物が重篤な症状で死んでしまえば、次の宿主に感染して数を増やすことができなくなるためです。いわゆる風邪を引き起こす4種類のコロナウイルスも、過去にヒトに感染するようになり、徐々に今の形になっていった可能性があります。新型コロナが5種類目の風邪になることが期待されます。

(2020年12月7日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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