オンライン診療の低迷

新型コロナウイルスの自宅療養者ら向けに、パソコン画面などを使うオンライン診療が日本で広がりません。日本経済新聞の調査によれば、2021年1~3月の初診からの利用頻度は、35道府県で人口10万人あたり月1回未満とほぼゼロでした。新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年4月、院内感染や受診控えが広がったことを受け、政府は流行が落ち着くまでの時限的な特例措置として、初診からのオンライン診療を解禁しました。2021年6月には、規制改革推進会議で2022年度から恒久化の方針を決めています。

厚生労働省の調査によれば、オンライン診療の利用者のうち85%が50歳以下です。発熱や風邪などの症状での受診が多くなっています。忙しくて通院しづらい働き盛りの世代の受診を促し、生活習慣病予防につながると期待する医師もいます。高齢者の在宅医療への活用が期待されるほか、遠方に専門医がいる難病患者らの通院の負担を軽減できる利点もあります。

日本医師会は、オンライン診療に消極的です。対面を原則とし、誤診で訴えられる可能性や診療動画が流出するといったリスクも指摘しています。医師からも、手間がかかる、得られる情報が少ないといった声が聞かれています。医師側は活用に消極的ですが、感染拡大で医療は後手に回っています。海外はオンライン化で迅速に対応しており、政府や地域が一体となって促進する取り組みが急務です。政府は、遅まきながらオンライン診療強化に乗り出しています。医師が活用しやすいようにコロナ患者への遠隔診療の報酬を2倍に引き上げています。

(2021年8月19日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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