カビによる肺炎

 肺に入ったカビの種類によっては、頑固な咳を伴う肺炎が起こります。その1つが、トリコスポロン・アサヒというカビを吸い込むことでアレルギーを引き起こす夏型過敏性肺炎です。日本を中心とした東アジア特有の病気で、610月ごろに特に増えます。主な症状は乾いた咳です。肺の炎症が進むと、息苦しさも伴います。カビを吸わなくなると症状は治まります。
 もう一つは、慢性肺アスペルギルス症です。湿った咳と痰が続き、重症になると血痰が出ます。原因となるアスペルギルスは、味噌など発酵食品を作るのに使うコウジカビの仲間です。大半は無害ですが、ごく一部の種類は感染力が強く、肺に住み着くと細胞を壊しながら広がります。慢性閉塞性肺疾患が進んでいたり、結核などで肺に空洞がある人、喫煙や加齢のため肺の抵抗力が低下している人は、感染のリスクが高まります。
 カビを吸い込むのは避けられませんが、吸う機会をなるべく減らすのが感染予防の第一歩です。特にこの時期は家の中の環境を清潔に保ち、カビの発生を防ぐのが重要になります。梅雨時は特に、室内のこまめな換気と水回りの掃除で、湿気とホコリを除去することが大切です。最も注意すべきはエアコンです。フィルターにホコリがつきやすいうえ、内部の結露でカビが増えます。汚れたまま使うと、部屋中にカビをまき散らすことになります。フィルターを定期的に掃除することが大切です。湿気が残りやすい浴室は換気をよくして、入浴後に浴室の水分を拭き取ることが必要になります。

(2017年5月27日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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