ゲノム編集で先天性眼疾患の治療

米国で、遺伝子を効率的に改変できるゲノム編集技術を使い、子どもの失明の原因になる目の病気で遺伝子治療の臨床試験を開始します。クリスパー・キャス9という手法を活用して人の体内で原因遺伝子を直接修復する世界初の臨床試験です。本研究は、昨年発覚した中国の研究者による受精卵へのゲノム編集のように影響が将来世代に引き継がれる恐れはなく、遺伝子の改変は患者の患部に限定されると想定しています。
臨床試験は、特定の遺伝子の変異が原因のレーバー先天性黒内障10型という病気を対象にします。患者数は多くありませんが、子どもの頃に発症し、目の網膜の機能が正常に働かず、進行して失明することもあります。
計画では、3歳以上の子どもと大人計18人に対し、網膜下にゲノム編集の薬剤を注射します。薬剤は細胞への運搬役となるウイルスベクターに、原因遺伝子の変異部分を正確に探し出すRNAと、変異部分を切り取って機能を正常化させるはさみ役の酵素を組み込んでいます。薬剤の濃度を変えるなどして、意図しない遺伝子の改変が起きないかなど安全性を評価するとともに有効性を調べます。

(2019年8月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。