ゲノム編集による病気の治療

遺伝情報を改変するゲノム編集技術を使い、病気を治療しようという研究が国内でも盛んになってきています。この技術により、遺伝病の原因遺伝子を修復したり、がんの治療にいかしたりすることができます。ゲノム編集には、体内で行う方法と、取り出した細胞を体外で編集して体に戻す方法があります。手法も、遺伝子の働きを取り戻すための修復と、特定の遺伝子を壊して治療効果を狙うものに大別されます。研究で先行する中国や欧米では、主に採血で取り出した細胞を体の外で編集する研究が進んでいます。免疫の働きにブレーキをかける遺伝子を壊し、がん患者の治療にいかしたり、エイズウイルスの感染に関わる遺伝子を壊してウイルスの活動を抑えたりします。
体外で編集する方が課題は少ないと考えられています。体外であれば改変結果に問題がないか検査できれば、安全な細胞だけを体に戻すことができます。体内で編集すると、そうした細胞を取り除くことができません。ゲノム編集は細菌や人工の酵素をはさみとして使います。体内での編集に使えば、本来人間の体の中にはない酵素に対して免疫が反応し、酵素が入った細胞は排除される可能性があります。それを防ぐためには、免疫抑制剤が必要となります。

(2018年10月11日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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