ゲノム編集の論文数の増加

ゲノム編集は、生命の設計図に例えられる遺伝子を効率よく切り貼りできる革新的な技術です。1996年に第1世代のZFN(ジンク・フィンガー・ヌクレアーゼ)が開発されて以降、2010年に第2世代のTALEN(ターレン)、2012年に第3世代のCRISPR-Cas9(クリスパーキャス9)が登場しました。CRISPR-Cas9を機に、ゲノム編集全体の論文数が飛躍的に増加し、2012年まで緩やかに増えていた論文数は、2013年に1,000本を超えています。CRISPR-Cas9に関する論文は2019年に5,269本を数え、ゲノム編集全体の75%を占めています。CRISPR-Cas9の論文を発表した機関を国別でみると、米国が圧倒しています。2019年には2,367本と世界全体の約45%を占めています。中国が猛追し、英独仏の欧州勢も上位10カ国に入っています。日本は2019年に347本で5位でした。

発表した論文が他の研究者に引用される回数は、その成果の注目度を示す指標になります。1位にハーバード大学、2位にマサチューセッツ工科大学の米国勢が着き、3位は傘下に多くの大学や研究機関をもつ中国科学院が食い込んでいます。日本で最も多い機関は東京大学で、世界では25位です。次いで理化学研究所が41位、京都大学が50位と続いています。

ゲノム編集は、生命科学の基礎研究だけでなく医療や動植物の品種改良など幅広い分野で応用できる基盤的な技術です。欧米に中国も加わり、競争が激しくなっています。米国の凄みは、優れた基礎研究とともに、その成果を医療や産業で応用しようと、大学とスタートアップ企業などが連携する仕組みにあります。生命科学・バイオ分野を国家的な重要課題に位置付ける中国も、政府と民間が一体となって研究を強化しています。

(2020年5月25日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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