コロナの通常医療への移行

感染症は、法令で危険度に応じて1~5類に分類されています。コロナは現在、2類以上に相当する新型インフルエンザ等感染症に位置づけられています。入院の勧告や行動制限、営業自粛などを要請できる厳格な体制です。5類相当ではこうした措置はとれず、感染抑制の狙いがありました。
5類相当への見直しの背景には、2つの要因が挙げられます。1つ目はコロナの重症化率の低下です。今夏に感染第7波が広がった大阪府では、60歳未満の重症化割合が0.01%と、インフルの0.03%よりも低くなっています。リスクが高い60歳以上も、0.14%と第5波の4.72%から大幅に下がり、インフルの0.79%を下回っています。背景には病原性が比較的低いコロナの変異型のオミクロン型への置き換わりがあります。
2つ目は、医療対応の改善です。コロナの飲み薬はこれまで国内で使われてきた海外メーカーのものだけでなく、塩野義製薬が開発した飲み薬を厚生労働省が緊急承認し、医療機関への配送が始まっています。コロナとインフルの同時検査キットの市販化などで、自らが感染を調べやすい環境も整ってきています。
分類見直しで大きく変わる可能性があるのが医療体制です。現在は症状のある患者は、発熱外来を中心に診察を受けることになっています。国内に4万1千施設ほどありますが、全国医療機関の4割未満にとどまっています。医療対応が一部の病院や診療所に集中し、医療逼迫の一因になっていました。5類相当になれば、広く一般の医療機関で診察を受けられるようになります。小規模なクリニックなどは、院内感染を懸念して患者の受け入れを拒むケースもありました。
費用負担も論点となります。現在はコロナ対応の医療は全額公費で負担しています。現在無償で処方されている米メルクの飲み薬のラゲブリオは、数万円の自己負担が生じる可能性があります。専門家からは、入院医療や高額な治療薬は公費負担の継続を求める声も上っています。5類相当に見直せば、インフルエンザワクチンと同じように同法上の定期接種に移行し、原則として自己負担となります。
感染者の把握をどうするかといった公衆衛生上の対応も変わります。5類相当の場合は定点報告の形で把握することになります。インフルエンザでは、計5,000カ所の内科と小児科が週あたりの感染者数を報告し、感染状況を推計しています。シンガポールでは、ワクチン未接種者のコロナ医療の公費負担を廃止しています。英国は、2月に通常の風邪と同じ扱いにしています。

(2022年12月1日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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