コロナ感染妊婦の自宅出産に憶う

妊娠中に新型コロナウイルスに感染し、自宅で療養していた千葉県柏市の妊娠29週の30代女性が、入院先が見つからないまま、医師ら不在の状態で自宅での出産を余儀なくされてしまうという事態が起こりました。生まれた男児は、心停止状態で大学病院に運ばれましたが、死亡が確認されました。コロナ患者を診療し、さらに産婦人科も診療できる医師、医療機関は限られています。さらに早産などのリスクのある妊婦さんを診療できる医療機関は、特に少なくなってしまいます。感染の急拡大で病床が逼迫するなか、コロナに感染した妊産婦の受け入れ態勢の脆弱さが浮き彫りとなった形です。

今回は広域調整をしても、全県で病床が不足してすぐに入院先が見つかりませんでした。今回の問題を受けて千葉大病院は、コロナに感染した妊産婦を受け入れる専用病床を設置する方針を決めています。県内の周産期医療ネットワークでは、感染した妊婦の健康観察はかかりつけ医が責任を持ってすること、緊急時には円滑に搬送して治療が始められるようにすることなどを確認しています。
東京都では、2020年4月~2021年7月までの妊婦の陽性者数は計460人に達しています。このうち今年7月は速報値で98人と、ひと月あたりで最多となっています。デルタ型の変異ウイルスの急拡大も背景に、妊婦の感染は大きく増えています。入院に至ったのは438人の95.2%で、感染したまま分娩したのは77人の16.7%でした。このうち帝王切開での出産は61人です。

陽性のまま出産する場合、感染防護のため帝王切開で分娩時間を短くすることが多くなっています。新生児もすぐに隔離する必要があるほか、妊婦には使えない薬もあり、医療機関にかかる負担は大きなものがあります。そのため、日本産科婦人科学会としては、学術団体として妊婦の不安解消に向けて、陽性妊婦の受け入れシステムの構築、自宅療養管理のマニュアル整備などを速やかに社会に発信していく必要があります。
妊婦の感染を防ぐためにも、ワクチン接種が推奨されます。日本産科婦人科学会など3団体は、今月14日、妊婦は時期を問わずワクチン接種を勧めるとの声明を発表しています。米疾病対策センター(CDC)が安全性が確認できたとして、妊婦に対して積極的に打つことを奨励する推奨との勧告を出しています。声明では、感染した妊婦の8割が夫やパートナーからの感染との調査も公表し、同居家族らの接種も求めています。ワクチン接種に対して不安を抱える妊婦は多く、妊娠、胎児、母乳、生殖器に悪影響を及ぼすという報告はないとの教育啓発が大切です。

(2021年8月20日 朝日新聞、日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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