コロナ病床の不足の理由

新型コロナウイルス患者に対応できる病床が不足しているとの報道が連日されています。国内の病院の多くは民間です。急性期病棟をもつ4,255医療機関のうち3分の2を占めています。厚生労働省の昨年11月末の集計では、コロナ患者の受け入れが可能と答えたのは、約4割の1,707機関であり、民間の受け入れはわずか21%に過ぎません。公的は83%、公立は71%と差は大きくなっています。
病院のほとんどを占める民間施設が、減収につながるとみてコロナ患者の受け入れを敬遠しがちなことが理由の一つです。大半が中小規模の民間病院は、コロナ病床のために病棟を一つ潰せば経営に直結します。赤字でも税金投入で維持される公立病院とは違います。
受け入れが進まない理由は他にもあります。日本は世界的にみても人口当たりのベッド数は多いのですが、医療スタッフ数は十分と言えません。東京都内には累計で約10万の病床がありますが、病床確保が難航するのは、医療スタッフの人員確保が難しいためです。特に重症のコロナ患者を受け入れている病院は、重篤な患者を受け入れる3次救急や移植手術など他病院に代替できない機能も担っています。そうした業務に従事する医師らを、コロナ対応に回すのは難しくなっています。
日本集中治療医学会によれば、コロナ重症患者が入るICUの専門医は、人口約8千万人のドイツには約8千人いますが、日本は約2千人にとどまっています。日本は病院ごとのICUの病床数が少なく、専門医も点在しているため、コロナ病床の整備が難しくなっています。

(2021年1月31日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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