コロナ禍でのテレワーク

NIRA総合研究開発機構と慶應義塾大学による調査によれば、コロナ禍において首都圏(1都3県)でテレワークをしている人の割合は、昨年4~5月の38%をピークに6月には29%に下がり、その後は3割未満で推移しています。全国でみれば、割合はさらに低く、昨年6月以降は16~17%にとどまっています。感染状況の違いや働く人のIT環境に差もあって、地方ではテレワークがほとんど定着していないのが現状です。
調査会社ガートナーの調査によれば、テレワークによる仕事の生産性について、日本では非常に下がった、やや下がったという回答が計39%にのぼっており、9カ国で最多です。逆に非常に上がった、やや上がったとみる肯定的な回答は、計14%と9カ国で最も少ない状況です。
欧米では、個人の仕事の範囲が明確で、テレワークでも仕事の分担や成果の評価が比較的しやすくなっています。一方日本では、職場のみんなで協力しながら、一つの仕事を進めていくのが主流となっています。テレワークによるコミュニケーション不足で仕事が滞ったり、自分の仕事が評価されているかが不安になったりと、様々な問題が起きやすくなっています。
テレワークでは、仕事と余暇の境目が曖昧になる長時間労働の問題や、通信費などの費用負担の問題など、労働政策上の課題も多くなってきます。押印や署名、決裁書類の多さなど、企業や行政に根づいた慣習の見直しも必要になります。定着が進めば、職種や企業規模、労働形態の違いにより、テレワークができる人とできない人の格差が広がる可能性も出てきます。今後の定着に向けては、出社率がただ低ければ良いわけではなく、仕事の効率アップや働き手の生活の向上といった利点につながるかどうかが鍵となります。

(2021年7月16日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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