コロナ禍での公立病院の経営難

新型コロナウイルス感染者を受け入れてきた病院の7割を占める公立・公的病院が、経営難に陥っています。地域医療の中核としてコロナ対応の最前線を担っていますが、収益が見込める健康診断や救急外来を削って対応してきました。その結果、病床稼働率は下がり、外来患者も減収となり、経営難に陥っています。地域の医療体制が崩壊しかねないとの懸念が広がっています。
厚生労働省によると、感染者を受け入れた922病院のうち、公立病院と日本赤十字のような公的病院が約7割を占めています。税金を投入している公立病院は、社会的責任も大きく、コロナ患者を受け入れなければならない状況にあります。公立病院は、医師不足による人件費の高騰などで約6割が赤字で、そこにコロナ対応が重なり資金繰りが悪化しています。

一方で、国は、人口減少により必要な病床数が減るとして、地域医療構想を掲げ、約440の公立・公的病院を再編・統合の対象にしています。しかし、新型コロナの感染拡大で病床が逼迫すると、都道府県などに協力を要請し、再編対象の72病院も感染者を受け入れています。国の地域医療構想は、感染症対策の視点がなく、経営への影響が大きいゆえに、新型コロナ対応の中心は、公立・公的病院が担わざるを得ない状況にありました。医療費削減のためにこうした病院を減らせば、感染拡大時に、地域医療は崩壊してしまいます。効率や経済合理性だけで地域医療は守ることはできず、政策の見直しは必須です。

(2020年7月20日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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