コロナ禍での出生数減少

コロナ禍で来年の出生数が減少するとの懸念が高まっています。厚生労働省の発表によれば、自治体が1~7月に受理した妊娠届の件数は51万3,850件となり、前年同期に比べて5.1%減っています。特に5月は17.1%減、6月は5.4%減、7月は10.9%減と減少幅が大きく、5~7月の累計では11.4%減の大幅な減少でした。
妊娠届の減少にはいくつかの要因が考えられます。春先以降、新型コロナの感染が拡大するにつれ、外出自粛で里帰りが難しくなるなど出産を取り巻く環境が大きく変わりました。医療機関がコロナ対応に追われる状況のなか、院内感染への警戒も広がりました。安心して出産できないと考え、子供を持つことを先送りする動きが出たとみられています。
コロナ禍では、企業活動が打撃を受けたことで雇用情勢が悪化しました。パートタイム労働者ら非正規雇用には雇い止めが広がりました。将来への不安を募らせ、出産を見送る人も増えた可能性があります。今後も出産を控える動きが続けば、来年の出生数が70万人台まで落ち込むシナリオも現実味がでてきています。
感染症への不安から妊娠を遅らせるだけなら、一過性のもので済むかも知れません。より深刻なのは、少子化の背景にある若い世代の経済的不安です。コロナ禍で若い世代の経済環境がさらに悪化すれば、少子化の加速にもつながる懸念があります。

(2020年10月22日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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