コロナ禍での教育格差の助長

コロナ禍で子育て世帯の教育・保育への支出額は落ち込んでいます。2019年比で2020年は15.1%、2021年は8.3%減っています。2019年10月からの幼児教育・保育の無償化や、コロナによる臨時休園時の保育料減免などが大きく影響しています。支出が増えている項目もあります。一方、学習塾の月謝などを含む学校以外での教育費は、2年連続でコロナ前を上回っています。経済産業省の調査でも、学習塾の売上高は2021年前半にコロナ前の水準をおおむね回復しています。
しかし、実態は均一ではありません。世帯収入を5段階に分けた最上位層(実収入平均値が月額112.1万円)は、2021年の幼児・小学校補習教育への支出が2019年に比べ44%増えています。年収の高い世帯は、休校等による学習時間を塾や家庭教師など学校外の勉強でカバーした可能性があります。他の4階層の支出に大きな変化はみられていません。共働き世帯で妻の休業が増えるなど、休校期間中に保護者が仕事を控えて子どもの勉強を手助けしていた傾向もうかがえます。所得が下押しされ、学校外教育を増加させる余裕の少なかった世帯もあると思われます。
コロナ下の問題は一過性ではありません。新型コロナウイルス危機からの出口を探る日本経済の課題は、人への投資です。その土台となる教育の格差が広がる芽が見え隠れしています。誰もが家庭の経済事情にかかわらず学ぶことができる環境整備を進め、質の高い教育を実現していくことが重要です。

(2022年8月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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