コロナ禍での空床補償

新型コロナウイルスに感染して入院してくる患者のため、ベッドを空けて準備する医療機関に支払われる空床補償が、2020年度は1兆1,424億円にのぼっています。この空床補償は、コロナ下の病院経営を支える目的で始まりました。多くの医療機関が経営を黒字化させましたが、人手不足などで患者を受け入れなかった病院も多くみられています。その一方で、治療が必要な患者すら入院できない事態も起きています。
コロナの重点医療機関で特定機能病院であれば、1床につき1日あたり重症患者用のICUは43万6千円、主に重症・中等症患者用の高度治療室のHCUは21万1千円、一般病床は7万4千円が空床補償として支払われます。コロナ患者が入院すれば、その病床は空床補償から外れ、代わりに診療報酬が支払われます。コロナ患者がいない今も、毎日空床補償は発生し続けています。慢性的に数億円程度の赤字続きだった東京都立の各病院も、2020年度は軒並み黒字化しています。
空床補償の対象なのに稼働していない幽霊病床が問題視されています。政府は、医療機関ごとに病床数と入院患者を毎日システムに入力させ、公表することで空床の見える化を進め、患者を受け入れるよう促しています。入力しなければ空床補償の対象から外れます。病床使用率が、その医療機関がある都道府県の平均使用率の7割を下回れば、空床補償額を3割減らすとしています。
来年1月からは、補償の対象となる休止病床数に上限も設けます。制度設計が追いつかないのはやむを得ない面もありましたが、今後は患者を受け入れるほど多く補償が受けられるような制度の改善が必要となります。

(2021年12月17日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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