コロナ禍における固定費の圧縮

固定費とは、企業の費用のうち、売上高の増減に関係なく発生する費用をさします。店舗や生産設備などの減価償却費や人件費、支払利息、賃借料、地代家賃などが含まれます。原材料費や労務費といった、生産量や販売量に連動して増減する費用を変動費といいます。売上高から固定費と変動費を差し引いた金額が企業の利益となります。
新型コロナウイルス禍による売上高の落ち込みを背景に、働き方の見直しやデジタル化を進め、固定費の圧縮に取り組む企業が相次いでいます。固定費を減らすと、売上高と費用が等しくなり、損益がゼロとなる売上高をさす損益分岐点も低くなります。損益分岐点を上回れば営業黒字、下回れば赤字となるため、損益分岐点が低いほど、減収になっても利益を出しやすい収益構造といえます。
損益分岐点を実際の売上高で割った指標が、損益分岐点比率で、企業のコスト競争力を見るのに用いられます。損益分岐点比率が相対的に高いのが、航空会社や鉄道会社です。機体や車両の減価償却費や乗務員の人件費、燃料費など乗客の多寡に関わらず、発生する固定費が重荷となり、大規模な赤字に落ち込む会社が目立っています。遠隔勤務が普及すれば、出張などのビジネス需要が、コロナ前から減る懸念もあり、固定費をどこまで抑えられるかが焦点になっています。

(2021年3月16日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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