コロナ禍における首都圏の病床使用率

わが国では、新型コロナウイルスの感染者数が米欧より少ないのに、医療が逼迫することが問題となっています。首都圏1都3県の2020年の病床使用率は、前年を下回り、受け入れ医療機関に偏りが出ています。
新型コロナの感染者数が多かった1都3県の一般病床の使用率は、2020年に一貫して前年同月を下回っています。感染症病床を含めても同様の結果です。病床が空いていてもすぐに入院できない患者が大量に発生したのは、専門の医師や看護師らが偏在しており、機動的に患者を受け入れる体制が整っていないためです。
日本は人口あたりの病床数が欧米より多くなっています。人口1,000人あたり13.0床で、米国の2.9床やドイツの8.0床を上回っています。OECD加盟国で最も多くなっています。しかし、病床あたりの医療従事者は少なく、1床あたりの臨床の医師数は0.2人で、米国の0.9人やドイツの0.5人を下回っています。
中小の病院が全国に点在し、医師も分散しています。欧米では大病院に医師が集まって入院治療に当たり、1人あたり1~2床を担当する計算です。日本では、医療資源が分散していることが、体制の脆弱さにつながっています。医療機関の間で柔軟に医師や看護師らが行き来する体制を構築できていません。
日本は病院の8割が民間の運営です。行政がコロナ患者の受け入れ体制を拡充しようとしても、基本的に要請にとどまります。十分なコロナ病床を確保できない状況が、最初の緊急事態宣言の発出から1年過ぎた今も続いています。これはひとえに、国や自治体、医師会によるガバナンスが効いていないことに起因しています。

(2021年4月16日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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