コロナ禍におけるGDPの減少

新型コロナウイルス禍により、個人の豊かさは90年ぶりの落ち込みを示しています。2020年の1人あたりGDPは、世界の85%の国で前年より減っています。その比率は大恐慌後の1930年代を上回っています。
コロナ禍にうまく対応できなかった国で、自由主義や民主主義への懐疑心が生まれています。命の危険に直面し、強い指導力による性急な解決を求める声はポピュリズムや権威主義への誘惑を駆り立てています。スウェーデンの調査機関が各国の政治体制を数値化した自由民主主義指数によれば、2016年以降、北米と西欧の平均値は、10年前と比べマイナスが続いています。民主主義の退行はファシズムが広がった1930年代以来です。
新型コロナ対策は世界規模で一気に進みました。経済の底割れを防ぐための財政出動や金融緩和は、市場への前例のないマネー流入につながっています。空前の株高が続き、図らずも金融資産を持つ者と持たざる者とのギャップはさらに広がっています。格差と不平等が常態となり、富を配分する機能が弱まった社会は脆く、ゆとりがなくなった人々から公共心や他者への寛容さが失われ、異質なものを安易に排斥するムードが漂うことになってしまいます。

 

(2021年3月31日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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