コロナ重症化の原因究明に向けた遺伝子解析

コロナ禍にあって、厳格なロックダウンを実施することなく、高齢化の進んでいる状況下にあっても、わが国の死亡者数は、アメリカやスペインはもちろん、制圧に成功しているとされるドイツと比べても、奇跡的なまでに少ない状況にあります。人口あたりの犠牲者数で比べれば、米国の約50分の1に抑えられています。4月上旬にはこのペースで進めば、東京だけで1カ月後には感染者が8万人を超えると強い危機感を抱かされていました。厚生労働省クラスター対策班は、対策が無ければ全国で最悪42万人が死亡するという警告を出していました。しかし現状は、累計の死者数が約800人、感染者約1万6千人にとどまっています。
このわが国のコロナ禍での死亡の少ない原因を検査する目的で、慶應義塾大学など8大学・研究機関は、新型コロナウイルスに感染して重症化しやすいかなど、遺伝的要因を調べる共同研究班であるコロナ制圧タスクフォースを発足させました。日本人が欧米に比べ人口あたりの死亡者数が少ない点に注目し、日本人の重症化に関係する遺伝子を探すことが目的です。
日本のみならず、アジア諸国でも欧米に比べ新型コロナウイルスに対する死亡率が低率です。高いマスク使用率や医療システムの違いのほか、地域集団や民族による遺伝的な要素が背景にあるとの見方もあります。研究班は、国内約40病院から新型コロナウイルスの感染者600人の血液を収集し、全遺伝情報(ゲノム)を解析します。軽症・無症状者と重症・死亡者の間に遺伝的な違いがあるかどうかを検討します。

(2020年5月22日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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