シルバー民主主義―Ⅱ

 シルバー・デモクラシー論では、高齢者がたとえ組織化されていなくとも大きな票田です。そのため、政治家は高齢者の選好を忖度するため、改革はなかなか進みません。こうした忖度は、特定利害が他の利害とバランスを欠くほど考慮されることになれば、それは民主的とはいえなくなってしまいます。社会保障・福祉の拡充は間違いなく人気政策ですので、選挙時にはどの政党も争ってその拡充を訴えています。社会保障給付の引き下げや資格要件の厳格化は、言うまでもなく不人気政策であり、非難を受けやすいため、政治家は関与を嫌います。
 もともと高齢化社会とは65歳以上の高齢者が全人口の7%を占める社会、高齢社会とは14%を占める社会を指します。現在高齢化率は、27%を超えています。高齢者の過剰が政治の世界に波及したのがシルバー民主主義です。シルバー民主主義が生み出す世代間格差を是正するためには、シルバー民主主義そのものを是正するか、シルバー民主主義が存在しても世代間格差を発生させない制度の構築が必要となります。
 シルバー民主主義に伴う低水準の家族政策が子育て環境を悪化させ、さらに少子高齢化・人口減少の流れに拍車をかけています。シルバー民主主義を解決するには、多数決民主主義の壁を乗り越えることが欠かせません。まさにそのことが民意の高齢化が進行する日本で、シルバー民主主義の解決を困難にしています。日本では民意の高齢化に加えて民意の近視眼化も進行しています。民意におもねるだけでは、長期的な視点に基づいた財政・社会保障制度改革一層困難となります。こうした悪循環を断ち切るために、大胆な発言に基づいた選挙制度改革を考えることも必要かもしれません。また高齢者年齢の定義の見直しも必要となるかもしれません。
 若い世代に蔓延する閉塞感を取り除き、時間軸の長い施策が大切です。そして財政破綻や急激な人口減少を回避することにより、長期的に持続可能な社会を構築しなければなりません。現在の政治はシルバー民主主義に席巻されています。民意の尊重と民意の遮断をどのように調和させるかが、今問われています。

(吉村 やすのり)

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