ジェンダード・イノベーションの必要性

女性が使いやすい製品やサービスを生み出すジェンダード・イノベーションに産官学が注目しています。工業、医療、福祉、農業など幅広い分野で、男性の利用を念頭に研究開発をしてきた現状を見直し、性差の分析を取り入れようとしています。
ジェンダード・イノベーションは、研究開発に生物学的、社会学的な性差の分析を生かし、技術革新を生み出すという考え方です。2005年に米スタンフォード大学のロンダ・シービンガー教授が提唱し、欧米やアジアに取り組みが広がってきました。
男性の視点で行われてきた研究成果は、女性には必ずしも当てはまらず、社会に悪影響を及ぼす場合もあります。シートベルトの開発や、医薬品の分野でも性差を考慮するという研究成果も出ています。性差を意識しないと、誤診を生み人命に関わる可能性もあります。
しかし、ジェンダード・イノベーションの推進には、課題があります。一つは性差の分析を取り入れると、実験をするにもこれまでより多くの費用と時間がかかることです。もう一つには、女性研究者の少なさがあります。日本の研究者に占める女性の割合は、2020年で17.5%であり、OECD加盟国の中では最低レベルです。
技術革新を進めるためには、男性を中心に経済成長を遂げた時代の価値観を変えることが必要となります。多様な人材が個性を尊重し合って研究開発をすることが、質の向上になり、国際競争力を高めることにつながります。

(2022年8月6日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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