スタートアップ業界のジェンダーバイアス

起業家、支援者問わず男性が多数を占める中、スタートアップ業界の女性起業家がジェンダーバイアスにさらされるケースが少なくありません。資金調達でも困難に直面し、新規上場に至る女性はごく限られるのが現状です。
金融庁の政策オープンラボは、2022年7月にスタートアップ業界のジェンダー課題をまとめています。報告書によると日本の起業家に占める女性比率は、2017年の時点で34.2%で、うち会社化しているのは2021年時点で14.2%です。さらに新規上場企業に占める女性社長となると、比率はわずか2%です。その背景には、業界のジェンダーの偏りと、そこから生じる偏見があると報告書は指摘しています。
出産や育児を事業推進上のリスクと認識し、資金調達のうえでネガティブな材料とされるケースは少なくありません。男性に偏ったコミュニティーに女性起業家が参加しづらいという、ネットワーキングの難しさもあります。情報収集などリアルな交流が大きな役割を持つ世界で、男性のように、時間を問わず投資家などと1対1で腹を割って話し合うようなことは難しい状況もあります。
女性創業だとより厳しい審査を経るため、調達額が保守的になりがちといった事情もあります。しかし、多様な視点が加わることで見過ごされがちな商機を見逃さず、新しいアイディアを生み、イノベーションを促します。優秀な人材確保にもつながります。多様性はあった方が良いものではなく、企業の成長に不可欠です。

(2023年3月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。