センテナリアンの増加

高齢化率で世界トップを走る日本で、1世紀を生き抜いた人々を示すセンテナリアンが急増しています。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、日本の100歳以上は、2050年に53万2千人に達するとされています。しかし、不安が先行し、歓迎ムードはあまりなく、孤独も余生に影を落としています。死離別で独身になる75歳以上の女性は、2030年までの10年間で130万人増え、800万人を超えるとされています。

一方で高齢者の金融資産は増え続けています。60歳以上の貯蓄を含む金融資産を推計したところ、2019年時点で約1,200兆円でした。15年間で約350兆円伸び、全体の3分の2を占めています。国際通貨基金は日本の高齢者の貯蓄率が近年上昇しているとし、想定外の長生きに備え、退職後も貯蓄を続けていると分析しています。眠っている資産はシルバーエコノミーの原動力になりえます。

高齢者の課題を解決するビジネスが育てば、消費が飛躍的に伸びる余地があります。担い手としての期待は消費だけではなく、労働、ボランティア、孫の世話など欧米の高齢者の経済的貢献度が、GDPの7.3%に相当すると算出されています。日本の2020年のGDPで見れば、建設業の5.9%や小売業の5.7%を上回っています。
日本では65歳以上の労働参加率が25.3%と、米国の20.2%、ドイツの7.8%より高くなっています。内閣府調査では、65歳を超えても働きたい人が7割に達し、働く意欲はまだ眠っています。経験を生かせる職業教育、社会課題の介護や子育て、地域に根ざした企業や観光の支援など活躍を待つ現場は少なくありません。
日本の高齢化率は29.1%と先進国で突出して高く、これが社会保障費の増大を招き、財政や家計を逼迫させる要因となってきました。しかし、寿命が着実に延びていくとすれば、65歳以上を高齢者と画一的に考え、限界を設定する必然性はありません。

(2022年1月7日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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