ハイパープログレッション病のメカニズムの究明

免疫の働きを利用してがんを攻撃する「免疫チェックポイント阻害剤」の治療後、がんが急速に大きくなることがあります。ハイパープログレッション病と呼ばれ、治療を受けた患者の10~25%で起こるとされています。この現象が起きる仕組みが動物実験で解明されました。
ハイパープログレッション病になった患者では、がんを攻撃するキラーT細胞が少なく、免疫の働きを抑える制御性T細胞が多く見られていました。これらの細胞のバランスが変化することが原因ではないかと考え、細胞のバランスを変えてから、免疫チェックポイント阻害剤の効果をマウスで試しています。
狙ったがん細胞だけを殺す光免疫療法の技術で、キラーT細胞を部分的に除き、制御性T細胞の働きが強い環境をつくって、免疫チェックポイント阻害剤の治療をすると、マウスのがんは急速に大きくなりました。治療前の免疫細胞のわずかなバランスの違いにより、免疫チェックポイント阻害剤が期待と逆に作用して、制御性T細胞の働きを強めたと推論されています。光免疫療法で制御性T細胞が働かないようにして、免疫チェックポイント阻害剤の効果を改善する方法が研究されています。

(2022年10月19日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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