パンデミック感染症に対する医療支出

人の移動を前提とするグローバル経済社会は、必然的に未知の感染症リスクを内包しています。パンデミック感染症時における医療支出と感染症による死亡率の関係性について、野口晴子早稲田大学教授が論述されています。直近10年間の1人あたりの政府医療支出とインフルエンザによる死亡率の関係性が検討されています。
1人当たりの政府医療支出の変化割合が1は直近の10年間で変化なし、1を超える場合は支出増、1を下回る場合は支出減を表しています。他方、インフル人口10万対死亡率の変化が0は同期間での変化なし、0を超える場合は死亡率増、0を下回る場合は死亡率減を示しています。1人当たりの政府医療支出の変化割合とインフルの死亡率の変化との間には、統計学的に有意な強い負の関連があります。支出が多ければ、死亡率は下がります。
感染症対策費の国際的なデータは存在しないため、各国のインフル対策についての厳密な費用対効果分析はできません。しかし、少なくとも、季節性インフルなど予測可能な感染症に対しては、平時における医療サービス全般に対する公的部門からの資源投入が、一定程度有効である可能性が考えられます。

(2020年3月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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