ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン―Ⅳ

HPVワクチンの必要性
HPVワクチン接種と子宮頸がん検診を併用することで、子宮頸がんに対する最大の防御効果が示される可能性があります。また、HPVワクチン接種は、子宮頸部以外の部位におけるHPV関連がんの発生リスクも減少させます。HPVワクチン接種は、HPVによる感染から被接種者を防御するだけではありません。ある集団において、ある程度の割合でHPVワクチンを接種することで、HPVの有病率を低下させることが期待できます。その結果、ワクチン非接種者に対する防御効果がある程度示されます。これを集団免疫といいます。HPVワクチン接種の普及により、全世界の子宮頸がんの発生率が約90%低下する可能性があります。さらにHPVワクチンは、集団検診とその後の治療、生検、ならびに子宮頸がん検診に伴う侵襲的処置の必要性を減らすため、結果的には医療費の削減および追跡調査に関連する不安の軽減に役立つことになります。
最近まで、子宮頸がんに比べ、HPVによる他のがんはそれほど一般的ではありませんでした。しかしながら、米国ではHPV陽性の中咽頭がんと肛門がんの発生率が上昇している。現在の米国では、HPVが引き起こす非子宮頸がんの発生率は子宮頸がんと同等であり、そのほとんどが男性に発生します。子宮頸がん以外のがんに対する正式な検診プログラムがないので、HPVワクチン接種の普及は、公衆衛生上重要な利益になる可能性があります。9価のHPVワクチンを接種することにより、肛門がんの新規発生件数を90%減少させると推定されます。

(吉村 やすのり)

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