ヒト細胞をもつヒツジの胎児

 東京大学の中内啓光教授らは、体のあらゆる細胞になる人のiPS細胞をヒツジの受精卵に入れて育て、人の細胞を持つヒツジの胎児を作製しています。iPS細胞を使い、ヒツジに人の細胞を持たせたのは初めてです。様々な動物で、人の臓器を作れるかを調べる研究の一つです。将来は動物の体内で人の臓器を作り、移植に利用できるようになります。
 日本では人の細胞が混入した動物の受精卵を着床させることは禁じられているため、中内氏が教授を兼務する米スタンフォード大学で実験しています。ヒツジの受精卵に人のiPS細胞を注入し、ヒツジの子宮に移植しました。受精卵が細胞分裂を繰り返し成長するに伴い、人のiPS細胞も様々な細胞に分化します。移植用の臓器製作ではブタの利用が有力視され、海外で人の細胞を持ったブタの胎児が作製されています。ヒツジは、ブタよりも人の細胞を持った胎児を作りやすい可能性があり、臓器の大きさも人と同程度で有望と考えられています。こうした研究が日本でも実施できるような体制を整えるべきです。

 

(2017年3月9日 日本経済新聞)
「わが国の生殖医療の未来」
(吉村 やすのり)

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