ヒトiPS細胞から卵原細胞作製

京都大学の斎藤教授らは、ヒトiPS細胞から卵子の元になる卵原細胞を作製することに成功しました。ヒトのiPS細胞から変化させた始原生殖細胞を、幼若マウスの卵巣から採った細胞と混ぜて培養しました。この細胞は70日を超えても生き残り、卵原細胞になることが分かりました。卵原細胞に特徴的な複数の遺伝子が働いていることなどが確認できました。これによりヒトでも、全てin vitroで卵原細胞を作製できることになります。このチームは、2015年にマウスで卵原細胞作製に成功していますが、マウスでは始原生殖細胞から数日で卵原細胞になるのに対し、ヒトでは70日以上かかるため、その間に死滅してしまう場合が多くなってしまいます。


ヒトは受精後10週の胎児期に生殖細胞の元が卵原細胞になり、出生前に卵母細胞に発育します。その後はいったん休止して思春期以降、排卵の時期に減数分裂を再開し、成熟卵子になります。こうした生殖細胞の発生の仕組みはほとんど分かっておらず、今後卵子に誘導する技術を確立して、そのメカニズムが解明されることが期待されます。卵原細胞ができたことにより、ヒトにおいても卵母細胞や卵子へと作製が進む道筋が見えてきたといえます。

(2018年9月21日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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