マッチング理念とは

マッチング理念とは、さまざまな好みや希望を持つ人々同士をどのようにマッチさせ、限られた資源をどのように配分するかということを研究する理念です。2012年にノーベル経済学賞を受賞した米スタンフォード大学のアルビン・ロス教授らが考案しました。高等数学とプログラミングを駆使して、隠れた需要と供給を掘り起こし、需要と供給を一致させます。
データなど形のない資産から、デジタル技術を使って価値を生み出す新たな経済では、効率的な市場が値段のつかない豊かさをもたらしています。腎臓交換は、腎臓がほしい人と、適合する腎臓を提供できる人を引き合わせる市場と言える仕組みですが、お金は介しません。通常は適合する家族がいなければ移植は難しく、亡くなった人からドナーが見つかるには何年もかかります。腎臓交換では不適合の患者とドナーをペアにした膨大なデータから適合する相手を見つけ、腎臓を交換します。このお金を介さない市場を通じて、米国で計8千~9千人、世界では1万人ほどの移植を成功させました。

デジタル技術が労働市場を効率化し、2025年に世界の雇用が7200万人増えるとの推計もあります。経済協力開発機構(OECD)の試算でも、需給のすれ違いなどが原因の失業率は主要国で低下しています。効力を極限まで高めて摩擦をなくすと無駄な生産や投資が減る分、見かけの成長は鈍ります。機械化を進めた産業革命以来、世界は有り余るモノをつくって成長をかさ上げし、豊かさを追い求めてきました。

低成長でも活気ある経済は、モノの生産が抑えられてGDPの低下要因となる半面、好きな時に好きなだけ使えるという、お金では測れない幸福度は増すと思われます。新しい発想で豊かさや幸せをとらえ直す時を迎えています。最近では、難民と受け入れ国をマッチングする研究が米英で始まっています。移民の好みやスキルと、受け入れ国のニーズや受け入れ能力をマッチングします。このマッチング理論は、少子化対策、特に待機児童の課題解決に貢献すると思われます。

(2019年9月20日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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