ロストジェネレーションを考える

ロストジェネレーションとは、1993年から2004年ごろまで新卒の求人倍率が極めて低かった時期に社会に出た世代をいいます。第2次ベビーブームの団塊ジュニアを含む約2千万人です。就職活動の時期にずれもあるため、現在は33歳から48歳にあたり、大卒者であっても求人倍率が低い就職氷河期世代ともよばれます。男性では、非正規雇用や無業で求職もしていない非労働力人口の割合が年長世代よりも高く、中高年引きこもりの増加とも大いに関連しています。賃金面でも、正規雇用を含めて他世代より低くなっています。
第1次ベビーブームである団塊の世代と、その子にあたる団塊ジュニアに引き続く、戦後3度目の出生数の山は生じませんでした。現在の少子化の原因は多岐にわたるものの、不安定雇用と低賃金という重しが、ロスジェネから次世代を育む力をそいだのは間違いありません。この世代が高齢化する20~30年後、単身で高齢化したロスジェネたちを支える現役世代はやせ細り、介護や医療を支える人手が絶対的に不足します。このまま不安定雇用が続けば、老後に生活保護を受ける人が急増します。
安倍政権は、今年の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)の原案に、就職氷河期世代への支援策を盛り込んでいます。今後3年間で正規雇用を30万人増やす目標を定め、集中支援プログラムを設けるとしています。非正規でも一定のスキルを身に付けてきた人から、無職のまま孤立しているひきこもりの人まで、支援が必要なロスジェネにも幅があります。それを一律の再教育プログラムに押し込んでも効果は限られてしまいます。ある意味この世代は時代の犠牲者でもあります。人生の半分近い年月を置き去りにされ、自分は世の中に認められていない、という感覚を持つ人も多いと思います。自己責任と突き放さず、個人の状況に即した多様性のある支援策を講ずることが大切になります。

(2019年6月17日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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