ワクチン格差

英国に続いて米で接種が始まることにより、感染収束に期待がかかっています。日本で接種が認められるのは来春以降になりそうですが、新興国はワクチンを十分に確保できていません。ワクチンの80%を富裕国が既に調達しています。コロナ禍で先進国の経済も傷つき、対策のため重い財政負担ものしかかっています。自国民の生命と健康に責任があることは言うまでもないことですが、感染症に国境はないという事実を思い起こす必要があります。
世界人口の14%に過ぎない富裕国が、主要なワクチン候補の53%を買い占めています。一方、貧困・新興国の67カ国で、来年ワクチンを接種できるのは10人に1人にとどまります。治験への協力で確保を図る国もあります。累計感染者数で世界3位のブラジルは、英アストラゼネカなどの治験に参加しています。資金と技術を持つ先進国がワクチンを独占し、貧しい国の人々が置き去りにされてしまっています。購入資金に加え、超低温での輸送態勢など、ハードルが高くなっています。
新興国は、世界人口の8割以上を占めています。しかし、中低所得国に向けて確保できたのはわずか7億回分です。検査が不十分で、統計以上に感染が蔓延している恐れもあり、ワクチンの確保急務です。WHOは、COVAXと呼ぶワクチン購入の国際枠組みを立ち上げ、公平な分配を急いでいます。COVAXには、日本を含む180カ国以上が資金を出しており、開発されたワクチンは出資国だけでなく途上国にも提供されるべきです。

(2020年12月13日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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