世界における単身世帯の増加

単身世帯の増加は、非婚化と少子化を同時に進ませ、人口減少を加速させます。現在わが国では、男性の3.5人に1人、女性の5.6人に1人が50歳の時点で未婚です。未婚者の多くは単身世帯となります。介護や福祉も家族の扶助が困難になり、孤独による心身の負担は増し、公的支援は重くなります。経済や社会の構成単位を一変させる家族の解体は先進国共通の課題です。
英国は、2018年に世界初の孤独担当相を設置しています。孤立が高齢者の認知症や若年層のメンタルヘルスを悪化させ、医療費を増やすことへの危機感が強くなっています。単身世帯比率が4割のスウェーデンでは、単身高齢者と安価な住居を探す海外からの移民や若年世代などが同居するセルボを開設しています。高齢者が移民に英語を教え、若年層が高齢者の生活を扶助します。65歳以上の4人に1人が社会的に孤立しているとされる米国では、若者が高齢者を訪問し、数十ドル程度の報酬と引き換えに、家事代行や会話、ゲームの相手を担うPapaを創業しています。
単身者が心身ともに健康で、高い生産性を発揮するため、個々の状況に応じた医療や支援体制が必要となります。さらに民の創意工夫で、孤独な高齢者とビジネスを両立させるような活動が大切になります。家族というつながりを喪失し、社会に散らばった寄る辺ない個人をいかに結びつけ、支え合うか、孤独という人口減少時代の病を官民の力で克服しなければなりません。

(2021年12月9日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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