世界人口増の鈍化

世界の人口が、80億人の大台に到達しました。国連の推計によると、70億人に達した2010年から12年間で10億人増えています。出生率の低下などで人口増加率は鈍化が進み、2020年に戦後初めて1%を下回りました。新興国含め幅広い国々で少子高齢化が進む中、持続的な経済成長の実現が世界の課題となります。
国連の中位推計では、90億人に到達する次の節目は2037年になります。80億人から90億人に増えるのには15年かかる見通しです。70億人から80億人が12年かかったことに比べスピードが緩むことになります。90億人から100億人にはさらに21年かかるとされています。
1950年に1.73%だった人口増加率は、1963年に2.27%まで加速しピークに達しました。その後は鈍化に転じました。1990年代には1.5%を下回り、2020年には1%を割り込みました。国連の予測では、2040年代には0.5%を下回り、2086年に人口増減率はマイナスに転じるとされています。
人口増加率が鈍化した背景には、世界各国で出生率が低下し、人口規模の維持に必要な置換水準である2%を割り込みつつあることがあります。高所得国の出生率は2022年時点で平均1.56に下がっています。中所得国も2010年の2.49から2022年は2.16に低下しています。人口爆発の回避は国の発展に追い風となりますが、一定期間後は高齢化と人口減少が避けられず、成長の足かせとなります。
低所得国の出生率は2022年時点で4.54と引き続き高い状況にあります。新興国の少子化が進むなか、所得水準の低いアフリカ諸国が世界人口の増加を牽引することとなります。
2022年の世界の平均寿命は71.7歳で、2010年の70.1歳から1.6歳上昇しました。世界の高齢化率は、2020年の7.7%から、2022年は9.8%と約2ポイント上がっています。高所得国は19.2%と5人に1人が65歳以上なのに対し、中所得国は8.7%とまだ低く、高齢化社会の入り口にあります。2010年から2022年にかけて、世界全体で65歳以上の人口が2.5億人増えましたが、うち1.8億人が中所得国でした。今後、新興国は増加する高齢者に対応した社会をどう構築するかが問われることになります。

(2022年11月15日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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