世界各国における所得格差と幸福度

2000年から2019年の実質GDPの年平均成長率をみると、スウェーデンは2.2%、フィンランドは1.4%、デンマークは1.3%伸びています。一方、所得格差の大きさを示すジニ係数(最大は1)は、直近で0.26~0.28にとどまっています。個人主義と共助が良いバランスにあります。競争を促しつつ、再挑戦を容易にすることで、格差を抑えながら成長する好循環となっています。
米国は、GDP成長率は2.0%ですが、ジニ係数が0.40と高く格差が広がっています。所得別人口の上位1%が稼いだ額の合計が全体の所得に占める比率は、過去30年で14%から19%にまで上昇しています。それに対し、下位50%は16%から13%に下がっています。富める者が富み、持たざる者が貧しくなる結果、幸福度は北欧を下回っています。
日本のGDP成長率は年平均0.7%と北欧を下回るのに、ジニ係数は0.33と北欧より高く、幸福度は低くなっています。バブル崩壊から30年、日本経済は低空飛行が続いています。雇用の安全を重視しすぎた結果、挑戦の機会を奪われた働き手はやる気を失っています。行き過ぎた平等主義が成長の芽を摘み、30年間も実質賃金が増えない国民総貧困化という危機的状況を生み出しています。

実質GDPと実質賃金の過去20年の伸び率をみると、日本はGDPで年率0.7%、賃金で0.1%とゼロ近傍にあります。他の国はかつての5%を超えるような高成長ではないものの、GDPで1~2%、賃金も1%前後と安定を保っています。この差を生むのは労働生産性です。時間あたりの労働生産性が、米国や北欧で60~70ドル台なのに対し、日本はわずか48ドルです。世界で最も深刻な人口減少に陥る日本では、生産性を高めないと経済成長は見込めず、賃金も上がらないことになってしまいます。

(2022年1月1日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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