中高年のひきこもりを考える

40~64歳のひきこもり状態の人が全国に61.3万人にいると推計されています。ひきこもる中高年の子と高齢の親が孤立する8050問題は深刻さを増し、こうした家族が関わる痛ましい事件も起きています。内閣府の調査によれば、ひきこもる人のうち、生きるのが苦しいと感じることがある人が49%、死んでしまいたいと思うことがある人が30%というデータがあります。ひきこもり当事者は、自己否定をし続けてきた年月が長すぎて、どう助けを求めてよいかもわからないといいます。ひきこもる人の多くは、働かないと人間ではないという意識を内側に抱え、日々苦しんでいます。

そもそもひきこもりとは、国が用いる定義では、仕事などの社会参加を避けて家にいる状態が半年以上続くことを言います。働いていない自分には価値がないなどと自分を責め続け、死を考えるほど思いつめる当事者たちの自己否定感に注目すべきです。問題は、ニュースソースとしてひきこもりが利用され、社会保障を圧迫するダメ人間という認識が固定化されることです。
以前は、不登校からの延長でひきこもるケースがほとんどでした。数年前から就労経験後にひきこもるケースが増え始め、今では逆転しています。全体の平均年齢を押し上げているのは、いわゆる就職氷河期世代で、ブラック企業で疲弊し、ひきこもりに移行している現実があります。職場のいじめなどでひきこもらざるをえない状況に追い込まれているケースもあります。半年以上誰とも話さないような孤立状態にあれば、大半の人は心身の健康を崩します。ひきこもり状態は、普通の人が追い詰められているだけと見るべきであり、そうした理解によってのみ、潜在的な力や健康を引き出せると思います。人に慣れ、親密な関係とはどういうものか、思い出してもらうリハビリの場づくりに、人もお金も投入すべきです。
ひきこもりの原因となるきっかけは、多岐にわたります。そして実像は見えにくく、親子の葛藤、介護、生活困窮など様々な困難をはらんでいます。孤立する家族を支える家族会活動、訪問支援、居場所づくりなど、家族会には具体的な支援のノウハウがあります。本人や家族のSOSをいかにキャッチするかが大切であり、家族には、子ども・ひきこもりのカミングアウトが前提になります。

(2019年6月16日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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