人口問題を考える―Ⅳ

リカレント教育の必要性
子供の数が減る時代にあって、各国・地域は、学び直しの支援を強化しています。既に労働市場に入っている成人を対象に、時代にあった新しい技術・知識をアップデートしてもらうことで、社会全体の生産性を底上げする狙いです。
欧米では、社会人が大学などで学び直すリカレント教育が普及しています。OECDなどのデータによれば、修士課程に入学する30歳以上の割合が、英米では約4割に達しています。日本では10%を下回り、大学など既存の学びの場をビジネスに生かしきれていません。多くの企業で終身雇用制度が維持される中で、一度仕事を離れることの難しさが浮き彫りになっています。

日本では、企業内で社員が学ぶ機会も海外に比べ見劣りする現状があります。企業が社員などに提供する能力開発費は、2010~2014年の平均値で日本はGDP比で0.1%です。10年前に比べ3分の1の水準まで縮んでいます。米国では2.1%、フランスやドイツも1%台と高い水準を誇っており、技術革新を生み出す素地を育んでいます。
少子化に伴う労働力の低下は、生産性の向上でもって補完するしかありません。国や企業は、経済対策などを通じ社会人の学び直しを後押しする人への投資を強力に推し進めるべきです。

(2022年7月29日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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