人口減少社会―Ⅲ

出生率の上昇
 今回の推計では、ここ数年の出生率向上を踏まえ、1人の女性が生涯に産む子どもの数である合計特殊出生率は、長期的に1.44と仮定しています。前回の1.35より上昇していますが、政府目標は1.8です。1.8は、若い世代が希望通りに子どもを持てる希望出生率と呼ばれる水準でありますが、これには遠く及びません。最近では、女性活躍推進や待機児童対策が少子化対策の主たる政策目標となっています。これら政策も少子化危機を突破するのに大切ですが、その先の出生率向上に向けての政策が、置き去りにされているのは残念なことです。
 出生率は2005年の1.26を底に2015年に1.45まで回復しています。これには、団塊ジュニア世代をはじめとする3040代の出産増がプラスに貢献しています。1人目の子どもを産む女性の継続就業率が、この5年間で初めて50%を超えました。待機児童対策などを通じて女性の就業が増えたことが、出生率の上昇につながったとしています。そもそも人口を一定に保つには、人口置換水準である2.07の出生率が必要です。1.44では将来1億人を大きく割り込んでしまいます。今後も政策次第で1.44を上回る可能性はありますが、1.8までの上昇は難しいと言わざるを得ません。

(2017年4月11日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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